昨年チャンスを逃した今回の大幡沢。その時に取付きは確認していたので、再訪を待ちわびていた。
今回は昨年と同じメンバーに、新しく「すー君「が加わった5人だ。長崎を前日18時頃に出発し、霧島へと向かう。現地の天気予報を携帯でチェックしてくれた「すー君」によれば雨が降っているようだ。明日は天気は回復しそうだが、今夜の宿をどうするか・・・・・
雨の中でテントを張るのは嫌だしなあ、、、幸い取付きはわかっているので道に迷う心配はない。
どこか適当な軒下のあるところを見つけてごろ寝するしかないな・・・・そう思って車を走らせていると、ありました!宴会場付きのテン場が!時間は22時。ここで寝ることにしよう。明日の起床時間を5:30とし、少しだけ車に積んできたお酒で明日の沢に向けモチベーションを高めます。
予定通り5:30にアラームで起こされる。テントを撤収。さっそく車を出し、途中のコンビニで買出しをして、大幡沢へと向かう。
当初の計画では6時30分には入渓したいと思っていたのだが、宿泊地点が変わったので少し時間は遅れ気味となった。いろいろ情報は集めては来たが、初めての沢に入る時は時間には余裕を持って計画を立てるのは基本中の基本だ。
入渓場所に7時過ぎに到着。他に車はない。どうやら我々だけのようだ。もっとも、地元の人はもっとゆっくり来る場合が多いようだが。
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入渓準備 |
堰堤の巻き道(?) |
スタートは明るいゴーロ |
準備を済ませて出発する。目の前にある堰堤を越えるのだが、立派な鉄パイプの階段が設置されている。まさか沢登りの人たちの為なんかじゃないよね?堰堤の保守管理とか、測量とかの時に使うんでしょう、きっと。
でも堰堤の向こう側には古くなって落ちそうな木のはしごがあった。堰堤から沢に降り立つと、「いいじゃないですか、広くて明るくてきれいじゃないですか、こりゃあ、いいかもね・・・」思わずほほが緩んでしまうのでした。
釜を持つ小滝とかがいくつか現れるが、汗をかくほどでもないので、いつもなら飛び込む「はまちゃん」も今日はおとなしく巻いたりへつったりしている。出発から1時間30分ほどすると、前方右側から滝が出合っているのが見えてきた。右手前から巻くという情報を得ていたので、巻き道の取り付きを探しながら滝に近づいて行った。そんなに深そうではないが大きな釜を持っている。滝の右手にある岩は少しハングしていて手がかりもなさそうに見える。「こりゃあ登れんなあ・・・」とか思って見ていると、何かがキラッと光った。
「ん?何だ、、、?」見ると、RCCボルトとリングボルトが50cm位の間隔で2本ハングの岩の上部に打たれている。「掛かって来なさい」そう聞こえたのは空耳か?「今日は遠慮しようかな・・・」そう思いながら振り返ると「はまちゃん」がロープを捌いていた、、、
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掛かって来なさい、と誘われてしまった10m滝、上段に逆くの字型の30m大滝がある
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「上等じゃねーか」、 しかし滝の上部がどうなっているのかがわからない。最悪の場合はボルトに届きさえすれば残置でダウンできるだろうし、右手のブッシュに逃げるかすればいいだろう、、、2年越の思いでやってきた大幡沢だ、楽しんで帰ろう。今度また来れるかどうかわからないしね。
フレンズとハーケンを準備して釜の中へと入っていく。滝の右手の草付きから取付く。RCCボルトの位置が遠い。下部にはリスもクラックもないので何とかしてあのボルトにロープを掛けなければならない。ぎりぎりのところまで登り上がって背伸びしてクリップ・・・・届いた。ホッ。
しかし次の動きに移れない。手はカチ系のホールドをマッチで保持できるのだが、左足を乗せるスタンスがない。あがいてみたがどうも無理だ。一旦テンションを掛け、下のボルトにシュリンゲを掛けてアブミ代わりに乗り込んでみることにした。まず左足をシュリンゲに乗せてみたがどうも違う。次に右足をクロス気味にシュリンゲに乗せ、グイッと乗り込んで左足を大きく上げて高い位置のスタンスに乗り込んで行く・・・・・OK!
う〜〜ん、ここはちょっと厳しいので、下から見上げていたメンバーに「はまちゃん」以外は高巻きするように伝えて上を目指す。この先は傾斜は緩やかになるが、スリップしそうだしホールドが乏しい。落ちれば大変なのでフレンズをひとつセットして慎重に登り上がる。平らになったところでフレンズ2ケで支点を作り「はまちゃん」をビレイする。
「はまちゃん」を迎えて振り返ると、大きな滝が目の前に。逆くの字型の30mの大滝だ。高巻き組と合流する。
これから上部は赤い色の沢床が美しいナメ歩きとなる。ナメ歩きが好きなmimimamaが喜んでいる。
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ひたひたと・・・・ |
なめは続くよ・・・・ |
どこまでも・・・・ |
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赤い河床の色の源泉か? |
左にC沢を分ける、河床の色が変わった |
8mほどの滝、左を巻く |
ナメ歩きを楽しんでいると「すー君」が源泉らしきものを発見! 確かにぶくぶくとかわいらしい吹き出しがあった。
そのすぐ上で沢は二俣となった。左はC沢、右へ行けばA、B沢方向。我々はB沢の予定なので右へと向かう。ここから沢の色は黒っぽい岩肌となる。相変わらず滝は続く。簡単に登れるものは登り、巻き道のあるものは巻いて進んでいく。前方がなにやら明るくなっている。
「おおっ、これは!」思わず仰け反りそうになる景観が目に飛び込んできた。前面を覆う岩壁の真中に水を噴出す滝が現れた。落差は20m程か。なにやらSF小説の「失われた世界」を想像させるような景色だ。しばらく滝を眺めた後、滝の右手のルンゼを詰める。落石に注意が必要だ。地元の人の登山道があるらしく、我々の目の前を単独の登山者が下って行った。
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この滝は右手のルンゼを行く |
噴き出すように水を放出する滝、圧巻! |
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ルンゼを登ると、岩壁に突き当たる。これを右へ右へと回り込んで行って岩の切れ目から林の中に入り、左方向へとトラバースして行く。
沢の音が再び近づいたので確かめてみると、結構な高さがある。しばらく左岸上部の樹林帯を進み高度差がなくなった所で沢へと戻った。
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ルンゼを抜け、岩を右へと巻いていく |
再び沢へ戻る |
12mほどの滝、危ないのでロープを出す |
水量は減ったものの、ナメや滝が次々と現れる。12mほどの滝は難しくはないが落ちるとアウトなのでロープを出す。
この後、我々の後ろからやってきたお二人連れに挨拶をする。地元の方との事だったのでA沢、B沢どちらがお勧めですか?と聞いてみると間髪入れずに「B沢」と答えられた。確かにA沢は倒木で覆われているし、水も少ない。B沢は水量もまだまだ十分だし、見るからに明るそうだ。お礼を言ってお二人には先行していただいた。
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頭上は開けている |
上段の滝が見える |
源流部となる |
言われたとおり、明るくて開放的なB沢に入り、それももうそろそろ終わりかな、と思っていると最後に2段の滝が見えてくる。下段の滝は階段状でスタスタと歩いて登れる。上段の滝は右から行けるが、最後の滝の落ち口に移るところがちょっと危ない。もしものことがあったらいけないのでロープを出す。
この滝を登るといよいよ大幡沢もフィナーレが近い。水が少なくなり、さらさらと流れる小川のようだ。九州の沢の詰めは藪こぎかヤバイガレ場登りと相場が決まっているがここは違う。最後まで明るく開けた大幡沢だった。水が涸れる前に昼食とする。沢の水でビールを冷やし、とりあえずの乾杯!
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大幡山山頂 |
大幡池展望所 |
お疲れ様でした! |
装備を解いて歩くこと30分程で主稜線へ出る。夷守岳と獅子戸岳との縦走路だ。昔何度か歩いた時のことが思い出される。縦走路を右に取ればすぐに大幡山の山頂に出る。そこから一歩きで大幡池展望所。我々の後ろには高千穂の峰が神々しい姿で裾野を広げている。「ああ〜霧島だ、、、霧島の大幡沢を辿ってここまで来たんだ、、、、」 なんだかいつもに増してセンチメンタルな自分がいる。
こうして2年越の恋を成就することができた。最近は再訪してみたいと思う沢になかなか出会わないが、この大幡沢にはまた来て見たいと思った。私たちの実力にふさわしいレベルの沢だったように思うし、なにより明るい!この日は曇り空の下の遡行だったのにそう思わせること自体気持ちの良い沢であることは間違いない。なにより最近のJimnyがこれだけのレポートを書くことは近年ない事だ。そうです、楽しかったのですう〜〜! |