≪沢登り≫ 

    【黒部・上の廊下】・・・・VOL-2 

私は、ガイド登山なるものは
初体験だが、山に限らず
いろいろなキャリアのある人たちと
数日をともに過ごすわけで、
刺激のある数日間だった。

山に対する思いも人それぞれで、
興味深い話が聞けて楽しかった。

もちろん、日本ではトップレベルの
志水さんの遡行をまのあたりに
できただけで、得がたい経験だった。

志水さんは、手取り足取り教えるタイプの
ガイドさんではないようだが、
無言で、たくさんの事を教えていただいたように思う。

そんな事を思いながら進んでいると
今回の核心だと、志水さんが言った
「口元のタル沢」出合いの淵に出た。

志水さんが、ライフジャケットを身に付けて
カラミで泳ぎ出すが、
1/3程のところから先に進めない。
流れに押し戻されて戻ってくる。

いつもは、それほど苦労せずに泳いでいけるそうだが
「水の流れが変わっている」そうだ。
「突破できないかも知れない・・・」と志水さん。

ラインを変える。
左岸沿いに泳ぎ、右手の岩の上から飛び込む。
水の流れに乗って、狙った地点に泳ぎ渡った。

サスガッ!
後で、志水さん曰く
  
「今のは、はっきり言って中級者には無理です」
「それに、この谷を知っていなければ出来ないでしょうね」
  
「ここを泳げなければ、高巻きに1時間半は
時間を食ってしまうところでした・・・・」  

志水さんにロープで引いてもらい、全員渡りきった。

確かに、海育ちで子供の頃から泳いでばかりいた
私だが、とてもこの水流では前には進めない。

それに、足下の水の中は、流れが違うように感じた。

今回の遡行で
唯一、志水さんが真剣な表情を見せた瞬間だった。

・・・・・・・・・・・・・・

この先にも、10mほどの泳ぎが出てきたが
A木さんが、カラミでトップで泳ぐ。

う〜ん、蒲田のアマゾネスだ!
右から「廊下沢」が出会う。
  
川幅が広がり、一段と明るい感じになってきた。
「広河原」と呼ばれている所だ。

今日のテン場を決める。

この少し先に、「上の黒ビンガ」と呼ばれる
きれいな所があるらしい。

遅くまで日が差さない所で、
明日は、朝早くそこを通過してしまうので
日が差している今のうちに、往復する事になった。

「ここでノンビリ待ってます」と言うM崎さんを残し
カラミで出掛ける。

左岸に、200〜300mの高さはありそうな
「上の黒ビンガ」が姿を見せる。

結構、崩壊が進んでいるようだ。

そのすぐ上流には、滝が二本ある。
下流の滝は、花こう岩の白い岩肌に水量豊富な
迫力のある滝だ。

滝の上には、二段、三段の滝が見える。
この上も見てみたいものだ。

上流の滝は、すだれになっていて
黒い岩の上から、繊細な水しぶきを落としている。

澄み切った秋空に、キラキラと太陽の光を浴びて
水たちが踊っている。

志水さんと、写真家のO塚さんは、
シャッターを切りつづけている。

夏よりも秋の方が、空気が澄んでいるので
うつくしいとの事。

私と、A木さんは、のんびり「上の廊下」の
空気に浸る。

テン場に流木を拾いなが戻る。

     *今夜のメニューは、もちろん、志水さんとM崎さんが釣り上げてくれるはずの
      イワナの塩焼き・・・・・・・・・・・・・・・は、ダメになったので
      担ぎ上げた「焼肉」となりました。

                        
                                ・・・・・・・VOL-3へ続く