≪Jimnyの山登りレポート≫
北岳バットレス第四尾根主稜

【登ったルート】・・・・・北岳バットレス第四尾根(南アルプス)
【 山 行 日 】・・・・・・2010年9月17日(金)〜9月21日(火)
【 天    候 】・・・・・晴れ
【メ ン バー】・・・・・・ハマちゃん、しんたろ、Jimny

*画像の日付が間違っています。正しくは9月19日です。
 タイムは正確だと思います。(かな?)
私たちの小さな山の会、「山人」としては初めてのアルプス遠征だったが、無事終了することが出来た。
過去2年続きで企画した「黒部・赤木沢」は、台風などの影響で中止となっていた。

バットレスは当初7月に計画していたが、梅雨明けが遅れそうとの判断で今回の日程に変更した。

参加予定だった「マック」が都合で参加できなくなり3人となったので、新幹線とレンタカーを使ってのアプローチに変更。
結果的にはこれでよかったと思う。日程的にもずいぶん余裕が生まれた。
長崎〜名古屋往復の新幹線と名古屋でのホテル1泊(これは帰路宿泊する)で、29.000円/1人のパックを利用した。

9/17
長崎駅に見送りに来てくれたイワナガ夫妻からスーパードライの差し入れを頂き「かもめ」に乗り込む。
ひとり2本づつのスーパードライはあっという間におなかの中へ・・・・・
次のビールを思案しているうちに博多駅に到着する。 
新幹線に乗り換えて、名古屋へ向かう。
名古屋からは予約していたレンタカーで芦安駐車場へ向かうが、土日割引の関係で「八ヶ岳SA」の片隅に
テントを張って就寝。ここで全員毛虫にやられた。痒い・・・

諏訪湖を望む 八ヶ岳SAにて 鳳凰三山を望む
9/18
SAで朝目覚めてテントから出てみると、快晴だ。
目の前に大きな山が見える。聞いたら「鋸岳」らしい。
その左手には鳳凰三山。その右奥に小さく見えているのが北岳。左側のスカイラインがバットレスらしい。
SAで周辺の山の表示板を見ていた神戸の山岳会の方に聞く事が出来た。
我々と同じ日程でバットレスを登るらしい。白根御池での再会を約束して別れた。
振り返ると八ヶ岳が大きく見えている。

高速を少し走り、白根ICで降りる。芦安のバス乗り場までそのまま走る。

たくさんの車が停まっている。
ずいぶん下の方の第五駐車場に車を置いて荷造りをしていると、乗り合いタクシーの運転手さんに声を掛けられた。
バスよりも100円だけ高い料金で広河原まで行くとの事。
お願いして広河原へと向かう。

乗り合いタクシーは急峻な渓谷の中腹に付けられた細い林道を快調に飛ばす。ほどなく広河原へ。

タクシーを降りるとそこは山の中。 体の芯で、少し熱くなるものを感じる。

荷物を担ぎ、ビジターセンターの横を通り吊橋を渡る。 吊橋の向こうは広河原山荘だ。
登山届けをポストに入れて、さあ登るぞ・・・・


広河原ビジターセンター

吊橋を渡る

白根御池を目指す
白根御池まではいきなりの急登が続く。 ギアが入ったザックが重い。 私のが一番軽くて、20kg弱。
はまちゃん、しんたろは20kgオーバーを担いでいる。

途中、第一ベンチ、第二ベンチで休憩し、白根御池に到着。 立派な小屋が建っている。

あまりいい場所は残っていなかったが、それなりの場所を探してテントを設営する。

一休みして、取り付き近くまで偵察に出かける。 二俣はすぐだ。
さらに1本涸れ沢を右に見て急な登りを進むと目印の大岩が転がるバットレス沢を確認する事が出来た。
時間も余裕がないので、今日はここまでを確認してテン場へと戻る。

今日の晩飯は、日本ハムの酢豚ちゃんです。
玉ねぎをサクサクと、ピーマンをバッサリとカットして炒めれば出来上がり! ハイ、2本目のビールで乾杯!


白根御池小屋

白根御池のテント村

バットレス沢
山の夜は早い。
少し悩みながら、明日は3時起床をメンバーに告げ、8時前には就寝した。
近くの大人数のパーティーも食事が終わって就寝のようだ。明日は2時半起床をリーダーが告げている。
また少し悩みが大きくなりながら、ウトウトして眠ってしまった。

隣のテントの音で目が覚める。時計を見ると1時過ぎだ。 なにやら食事の準備をしているようだ。

私は充分に眠れたようで、頭が冴えてきた。 はまちゃん、しんたろも目覚めているようだ。
「起きてる?」と私。 「起きてます」と二人。 「よし、起きるぞ」と私。 
「食事は二俣で取るぞ」と伝え、静かにテントを出発した。2時ちょうど。テン場を出発したのは我々が一番のようだった。

二俣に着き、真っ暗な中で行動食を口に入れる。 バットレス沢に着いた。 ここから先は昨日も下見はしていない。
ふと見ると前方にヘッドランプの灯りが2つ見える。 どこかにビバークしていたのだろう。
このヘッドランプに釣られてDガリーに入ってしまうことになる。
ヘッドランプで出発 雪渓が残っている 下部岩壁が見えてきた
ガリーを詰めすぎてしまい、危ない下りをする羽目になった。
途中から強引にブッシュに入り(このあたりで明るくなってきて、やっと現在地が把握できるようになった)
雪渓の残るCガリーをトラバースし、Bガリーへのルートに戻った。
そしてBガリー大滝下に着いてみると、すでに20人ほどが順番待ちの列を作っていた。 
私たちがルートミスした間に追い抜いたパーティーと、どこかでビバークしていたパーティーだと思われる。

*この下部岩壁取り付きでは2時間半待ち。 以下同じようにほとんどのピッチで1時間以上の待ち時間があった。

ここの順番待ちで前後したパーティーとは、終了点まで旅は道連れ世は情けの仲となる・・・・・


下部岩壁(Bガリー大滝)

1ピッチ目:中央のクラックを登る。ビレイ点は2ヶ所ある。我々は上の方でピッチを切った。
2ピッチ目:下部岩壁の終了点まで登る。 *動画
       ロープが落石を引き起こすので、ビレイするロープのラインに配慮が必要だが、どうしようもない部分もある。


下部岩壁を登る

下部岩壁を上から見る

緩傾斜帯・このあたり要注意
緩傾斜帯

アンザイレンのまま、ザラザラの踏み跡を登る。ランニングビレイが取れない。ここはかなり危険だと思った。
まず、下部岩壁の終了点から左に草付を10mほど進み、右にカーブし10mほど進む。
少し安定している場所がある。ビレイポイントあり。

更に左寄りに急な傾斜のルンゼ気味を20mほど直上するが、ここが危ないと思った。
ここは立ち木で支点が取れるので、ビレイしたほうがいい。

ここから左に歩きになる。そのまま直上したパーティーもいたが、
後でbガリーに懸垂下降しなければいけなくなるので左に歩いたほうがいいと思う。

左に歩くと小さな尾根を越える。ここから四尾根取り付きにクライマーが集まっているのが見える。
bガリーに下る。bガリーには中央稜の方から頻繁に落石が発生している。

落石のラインを避けながら(無理な部分もあるが)bガリーを登り、四尾根の取り付きに着く。
セルフビレイはハーケンを打って取った。ここも落石が多いので注意が必要。


四尾根

1ピッチ目:左側のフェースを登る。20m位か。
       ここには残置支点はない。登り上がって左手にある立ち木で中間支点が取れる。
       そのまま2ピッチ目の取り付きまで行けるが、先行パーティーが溜まっているので一旦切る。
       しばらくして、アンザイレンのまま、草付の踏み跡を辿り2ピッチ目のテラスへ到着。

2ピッチ目:右と左にラインがあり、各パーティー順番に登っていく。 *動画
       我々は右のライン。出だしがちょっと立っている。後は快適なフェース。
       ピッチを切れる支点が複数あるので、先行パーティーの様子を見ながら少し下でピッチを切る。

3ピッチ目:先行が何人が出て、ビレイ地点が空いたのを確認して、
       我々が切った2ピッチ目から10mほど登り正規のビレイ点へ。ここから3ピッチ目が始まる。
       「白い岩のクラック」と呼ばれるピッチ、40mV級とトポにある。しんたろリード。
       我々はこのピッチを2回に切った。

4ピッチ目:ここも簡単なリッジ。
       そして核心と言われる3mの垂壁(X級)から始まるテラスに到着する。

5ピッチ目:この時点で、我々が目指していた中央稜への継続は時間的に断念。
       先行パーティーは垂壁を右側から巻くように越えて行った。
       中央稜も断念したことだし、ひとつくらいはお土産を持って帰ろうと思い、
       垂壁の直登にトライ。Jimnyリード。
       聞いていたよりはシューズのフリクションも利く。
       ハンドホールドも小さな縦シワ横シワが使える。
       思ったより簡単に登れた。V!
       垂壁を越えると、快適なリッジをグイグイ高度を稼ぐ。(でも空気が薄いので息は上がる)
       そしてマッチ箱の頭に到着。

(懸垂下降):ここから左側へ10mの懸垂下降。
        右側の高度感が凄い!


6ピッチ目:落石を受けて手に軽症を負ったはまちゃんがリードする。
       結構悪いと感じた。
       このピッチも2回に切り、上部はしんたろがリードする。
       しんたろの部分も悪い。アブミ代わりの残置シュリンゲを使わず、しんたろはフリーにこだわって抜けた。

7ピッチ目:多分最後のピッチだろうと言うことで、二人が私に花を持たせてくれてリードする。
       簡単だがピンはほとんどない。息も上がり苦しい。平坦になったところでビレイ。

       ロープを解かずそのまま二人に上がってもらい、しんたろからの「OKです!」のコールを受けて私が登る、
       着いてみるとそこが四尾根の終了点、先行した杉並山の会のメンバーも寛いでいる。
       メンバーと握手を交わし、杉並の方たちとも祝福を交わして記念撮影を撮り合う。

       
四尾根の取り付きで待つ
四尾根1ピッチ目
2ピッチ目取り付きのテラス
2ピッチ目・・・1

2ピッチ目・・・2

2ピッチ目・・・3

5ピッチ目・核心と言われる垂壁
中央からフリーで抜ける
富士山が頭を出している


マッチ箱からの懸垂下降


6ピッチ目・・・1

6ピッチ目・・・2

6ピッチ目・・・3

ここで装備を解いてしばらく休む。
時間はすでに16:30、あまりゆっくりもしてはおられない。

ここから北岳の山頂までのきついこときついこと・・・・・
20分ほどで山頂に到着。全員初めての北岳だ。
と言うか、全員南アルプスは初めてだったのです。

山頂で、長崎アリーナ(クライミングウォール)仲間からリクエストがあっていた覆面での記念撮影
(ワシは恥ずかしかったぞお〜〜)も終え、すたこらさっさと下山する。
     

北岳山頂にて・怪しい三人

肩の小屋が見える

肩の小屋から見る落陽
肩の小屋には大勢の登山者がいた。テントも多い。
ちょうど夕陽が落ちる時間で、みなカメラを構えて並んでいた。
       
バットレスを無事登り終えた報告を小屋の公衆電話から留守本部に入れる。
日が落ち、風も出てきて急に気温が下がった。
小太郎山への分岐は見過ごしたのかわからないまま、白根御池小屋への分岐へ出る。
少し下ったあたりでヘッドランプを点ける。
しんたろが先行してグングン下る。
私とはまちゃんは、ヘロヘロ下る。
遥か下のほうに、白根御池のテントの明かりが見えてきた。

白根御池到着は19:30頃。
テン場を出たのが2:00だったから、17時間30分掛かったことになる。

アプローチでの道迷いで1時間30分ほどロスをしているので、
下部岩壁も含めて岩場にいた時間は11時間ほど。
そのうち実際に動いていた(登っていた)時間は4時間程度と思われるので、
待ち時間が7時間あったことになる。

下部岩壁到着が5:30だった。その時点で並んでいたクライマーは20人、7〜8パーティーと思われる。
この時前後して登ったパーティーはどれもスムーズに行動していた。
いわゆるモタモタするようなパーティーは全くいなかった。
       
私たちの取り付きの時間や待っていた人数などから、
今後四尾根を登る人たちのひとつの参考になるかも知れない。
取りあえず明るい時間に北岳山頂に到達していないと、下山は厳しいと思われる。
実際、あるパーティーは周りが寝静まった11時頃テン場に到着し、「やばかった」と話していた。
岩の中で暗くなってしまったようだ。

私がもうひとつ、ここで書きとめておきたいことは、
クライマーがたくさん取り付けば当然渋滞は起こり、時間は掛かる。
そのクライマ−の列を見て、「なんだよ〜〜」みたいな事を言う人もいたが、
その人も含めて自分たちが渋滞を作っているということを忘れてはいけない。

みんな渋滞は覚悟の上、順番待ちは当然、そんな人たちが我々のパーティーの前後にはいてくれて
楽しく、気分のいいクライミングが出来た。
渋滞の待ち時間のテラスでは、いろいろな話をすることも出来た。
みんな山が岩が好きなんだなあ〜と嬉しくなった。

東京杉並の4人パーティーはとても無口なお嬢さんが印象的だった(ちょっと笑い)。
栃木ペアの若者は、とても感じの良い礼儀正しい人だった。
谷川岳に来るときはぜひ連絡下さいと言ってくれた。
八ヶ岳SAと下山後のお風呂で一緒になった神戸の山岳会の方ともお話をさせていただいた。
芦安からのタクシーで同乗し、取り付きでも一緒になった横浜の男性のことも忘れられない。
そして、私たちのテントの横にツェルトで泊まっておられたお二人。
楽しい時間を過ごせました。ありがとうございました。
      
岩を登っている時、
ビレイ地点に人が立てる余裕が生まれたら、先行パーティーからコールがあった。
「長崎さん、どうぞ〜〜!」
私たちも、次のパーティーにコールした。
「栃木さん、どうぞ〜〜!」

いつもいつも山に来て思う事がある。
山は人を優しくしてくれる。
山の中にいると、人は優しくなれる。
       
山を始めた頃の山行記録を書きとめた古い大学ノートがある。
私の山行記録に、タイムとかよりも詳しく書かれているのは
山で出会った登山者のこととか、下山後、里で地元の人と触れ合ったこととか、
そんなことばかりがやけに詳しく書かれている。

私は会のメンバーにいつも言う。

「どの山に登った」とか、「どのルートを落とした」とか、
それはそれで自分の価値観で大事なことかも知れない
でもね、山登りの本当の素晴らしさは、山登りの過程で湧き上がってくる感動を
同じ思いで共有できる友と出会うことなんじゃないかと俺は思うんだ・・・・」

今回のバットレスでたまたま一緒になって前後して岩を登り、
多分二度と会うこともないであろう人たちと同じ思いを共有できていたこと、
そんな人たちが何人も日本のどこかにいて、今日も山に登り岩に張り付き、山の計画を考えている。
そんな人たちと過ごした岩の中の時間が今度の山行の一番の財産になるのではないかな・・・・

このレポートを書きながらそんな事を思っています。 素敵な出合いをありがとう!

翌朝白根御池から見た北岳 帰りの新幹線にて 帰ってきたよ・雲仙岳が見える

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