≪Jimnyの山登りレポート≫

鉾岳・大長征ルート

          
ちょこちょことクライミングを始めた頃から憧れていた鉾岳、、、
念願かなってmimimamaさんと二人で登ってきました。
                          

【登った岩】・・・・・・・宮崎県の岩場・鉾岳「大長征ルート・9ピッチ」
【山 行 日】・・・・・・・2006年9月30日(土)
【天   候】・・・・・・・・晴れ
【メンバー】・・・・・・・・Jimny、mimimama


mimimamaさんとの久しぶりの二人旅、
喧嘩しないように、と思ってはいたのだが、登りはじめるまではいつものパターンでした。

金曜日の夕方には長崎を出発。
御船ICで高速を降りて、一路宮崎へ。

鹿川キャンプ場と宇土内谷への道が分かれるところで車中泊とした。
広島ナンバーの車がすでに1台停まっていたが、朝からハイカーとわかる。
トイレがきれいになっていた。今年の4月にできたらしい。
予報では、天気は夕方から崩れるようだ。
明日予定していた比叡山のルートは、またの機会があるだろうから
今日の鉾岳はなんとか登っておきたい。
鉾岳自体が私達は初めての山だ。

そんな鉾岳の初めての1本に選んだのが、「大長征ルート」。
鉾岳の看板ルートとも言える「美しきトラバースルート」のトラバース部分を越え
「大滝左ルート」の核心部のスラブを直上するというものだ。

慣れないスラブ登攀ではあるが、登ることそれ自体はなんとか登れるのでは、と思ってはいるが、
なにせランニングビレーのピンが少ないことへの精神的な面や、
初見ということで、ピッチを切るポイントのミスや交差するルートへ間違って入っていかないか、
などという事が最も気を付けなければならない点だ。
緑がきれいな鹿川キャンプ場の横を通り、山道に入る。
急な登りで息が切れそうだ。

私達の足で50分ほど歩くと、道の左手に鉾岳スラブ取り付きへの看板があった。
そこからほんのちょっと登ると、いきなり鉾岳の大スラブが目の前に広がった。

それなりにいろんな山に登って、感動する景観には出会ってきたつもりだったが
このスラブを見た瞬間は、息を呑んでしまった。

私達の前には先行するパーティーの姿はない。
この岩を自分達だけで独り占めできる喜びと、誰もいない不安が交差する。
1ピッチ目」45m/W・・・・mimimamaリード
朝日が差し始めた岩にmimimamaが取り付く。
傾斜の緩いスラブだが、明確なホールドやスタンスはなく、スタスタ、、、、とは行けない。
ピンは2本だったろうか、
フォローの私はそれなりにスタスタと行けた。

「2ピッチ目」45m/W・・・・Jimnyリード
自分がリードしてみると、やはりフォローの時みたいにスタスタとは行けないものだ。
なんせ、ピンが遠い、と言うか、 「ない!」 

「3ピッチ目」35m/W・・・・mimimamaリード
岩の真中に立つ松ノ木を目指してmimimamaがリードする。
松の木直下あたりが怖い。

「4ピッチ目」30m/W−・・・・Jimnyリード
3ピッチ目まではほとんど直上の感じだったが、このピッチから右上に斜上するようになる。
少しずつ体の左側の岩も迫ってくる感じで、慎重になって来る。
他のルートのものと思われるビレイ点がいくつかあり、ロープを延ばし過ぎてしまいちょっと危なかった。
みなさん、仲の悪い夫婦で登るときも、ロープ残量のコールを日頃からきちんとしておきましょう!
「5ピッチ目」35m/W+・・・・mimimamaリード
出だしがちょっと怖い。
いよいよ美しきトラバースにかかる。
ネットなどで見ていた印象とすると、それほど恐怖感はない。
それにしても、美しく素晴らしい!

「6ピッチ目」35m/X−・・・・Jimnyリード
5ピッチ目の終了点で私を迎えてくれたmimimamaさんと交差して
そのまま次の6ピッチ目に向かう。
振り返ると、ビレイしているmimimamaさんは広大なスラブの真中にポツンと立つ少女のように見える。
いえ、そろそろ老眼ですけどまだそんなにぼやけて見えるわけではありません、、ホントに、
確かに、人って生き物は輝いて見える場所があるように思います。
最近のこの人は、岩や壁の中にいる時がそうかも知れないなあ〜と思いながら
ファインダーの中の彼女を見ていました。

「7ピッチ目」45m/V?・・・・mimimamaリード
7ピッチ目からは、直上する「美しきトラバースルート」と分かれてそのままバンドを先まで進む。
このルート上で最も安心できるピッチのようだ。
このバンドの突き当たりのテラスで休憩とする。
行動食を口に入れて、トポを見る。
ここから直上するのだが、この次はスラブ、その次はスラブからクラックとある。
クラックに自信がないと言うmimimamaさんが次を行き、9ピッチ目を私が務めることとした。
「8ピッチ目」30m/X・・・・mimimamaリード
8ピッチ目にmimimamaが取り付く。
最初のピンまで5mくらいか、
レポートには米粒ほどのホールドに足を乗せ、手は岩の結晶を摘まんで登る、、、、とあるが、
米粒ほどのホールドなんてほとんどないじゃん!
せいぜいパン粉のかけらじゃん!
米粒を見つけたらガバがあった!、、、なんて世界でした。

「9ピッチ目」45m/X+・・・・Jimnyリード
このピッチも厳しいスラブで始まる。
30mほどスラブを登ると、頭上にクラックが2本見えてくる。
仕入れてきた情報どおりに左のクラックを目指す。
かなりランナウトしている。
細い立ち木があったのでとりあえずシュリンゲをまわしてランニングビレイを取る。
そしてクラックを登って平行ピンのあるビレイ点に辿り着いた。

セルフビレイを取り、ひと呼吸おいてmimimamaさんのビレイの準備に取り掛かる。
mimimamaさんの姿はまったく見えないし、声も通らない。
ロープの張りでこちらの意思を伝えるしかない。
こんな時は、日頃仲良くしているかどうかがとても大切なことです。
 
mimimamaさんを迎え入れ、そのまま1の坊主の下を左へ、
下降地点の懸垂支点のところまで来て、ここで今日のパートナーと祝福のツーショト。
充実感がこみ上げて来て、満ち足りた気持ちになりました。

ここからも気は抜けません。
懸垂下降で樹林帯に降り、フィックスロープを頼りにぐんぐん下り、
気が付くと、今朝取り付いた地点にあっさり下っていました。

山道を鹿川キャンプ場へと下山し、車の横にシートを広げてしばらく寝転びました。
青空に秋の雲が浮かんでいます。
今日は午後から曇り、夕方からは雨との天気予報でしたが、
長年の思いを抱いて鉾岳までやってきた私達を、
山の神様が見守っていてくれたのだと、思わずにはおれませんでした。

前夜、鹿川に着くまでの車中では口喧嘩ばかりしていた私達夫婦は、
鉾岳からの帰りの車中はとても仲良しでした。 
*イエイエ、だからほんとだってば!ふきふき"A^^;



*レポート中のピッチの長さとグレードは水流渓人さんのHPを参照させていただきました。

*参考タイム:上鹿川キャンプ場(7:30)〜取り付き(8:15)〜登攀開始(8:40)〜
         美しきトラバースルート分かれ(10:55)〜テラス(11:05/11:20)〜8.9ピッチへ
         終了点(12:15)〜下降点へ(12:30/12:50)〜取り付きへ戻る(13:15)〜
         上鹿川キャンプ場(13:50)

*長崎への帰路の記録(高速を使用せず)
         上鹿川〜日之影温泉〜R218〜高千穂町〜R325〜R265合流右へ〜
         再びR325〜栃の木温泉(阿蘇大橋迂回路)〜R57〜R325菊池方面へ〜
         山鹿からR443〜柳川からR208へ〜筑後川を越えてR444へ〜
         鹿島、平谷を越え大村、長崎へ